
素材を知る、木の物語。
Understanding Wood: The Story of Antique Materials
アンティークを彩る木材の奥深い世界

@レオンハルト・レンツ、CC BY-SA 4.0、Wikimedia Commons経由
アンティーク家具の魅力は、デザインだけではありません。時を重ねた木材が持つ独特の風合いや、そこから漂う温かみもまた、アンティーク家具ならではの魅力と言えるでしょう。本コラムでは、アンティーク家具に使われる木材の種類や特徴、そしてその背景にある歴史や文化を丁寧に解説します。木材の知識を深めることで、あなたもきっと「木」の虜になるはずです。
アンティーク家具を彩る代表的な木材
アンティーク家具の魅力は、その美しいデザインや歴史だけではありません。時を経てもなお、人々を魅了し続けるのは、素材となる木材が持つ独特の風合いと、職人たちの熟練した技術によるものです。
数々の木材の中でも、特にアンティーク家具を語る上で欠かせないのが、オーク、ウォールナット、マホガニーの3つです。これらの木材は、それぞれが個性的な表情を持ち、アンティーク家具に深みと風格を与えています。
これらの代表的な木材が持つ特徴や、アンティーク家具にどのように活かされているのかを詳しく解説していきます。それぞれの木材が持つ物語を知ることで、アンティーク家具の新たな魅力に出会えることでしょう。

オーク
Oak
ヨーロッパ・北米原産のブナ科広葉樹で、日本ではナラとして親しまれています。硬く耐久性に優れ、虎斑(とらふ)という美しい木目が特徴。重厚で堅牢なため、古くから家具や建築材に用いられ、使い込むほどに味わいを増します。
ヨーロッパで古代から重用されたオークは、特にイギリスで「オークの時代」を築き、ヴァイキング船にも使われた堅牢な木材であり、中世ヨーロッパでは城や教会の建築、家具に広く用いられ、権威や伝統の象徴として格式高い場所で多用されました。



1.堅牢性と耐久性
その卓越した強度と耐久性で知られるこの木材は、古くからヨーロッパの建築や家具に用いられ、何世代にもわたって使用できる堅牢さが魅力です。使い込むほどに増す風合いは、所有者に特別な愛着をもたらします。また、耐久性が高いだけでなく、加工性にも優れているため、複雑な装飾が施されたアンティーク家具にも多く使用されています。
2. 虎斑の美しさ
この木材の最大の特徴である「虎斑(とらふ)」は、虎の毛皮のような独特の模様です。この模様は、木材に含まれる放射組織が表面に現れることで生まれます。アンティーク家具では、この虎斑がより際立つように加工されているものが多く、一点ものの美しさを楽しめます。虎斑は木の種類や産地で模様が異なり、個性的な表情を見せてくれます。
3.着色で個性を演出
木目の美に加え、着色性の高さも魅力です。伝統技法による着色は深みや風合いを演出し、家具に唯一無二の表情を与えます。特にアンティークのオーク材は、歴史を物語る独特の風合いを持ち、色の変化や陰影が複雑に絡み合います。天然染料を用いた着色は現代塗料にない深みと温かみを持ち、時を経るほど美しさを際立たせ、家具の価値を高めます。
4. 時を重ね風格が増す
時間の経過と共に色合いを深め、独特の風合いを増すオーク。使い込むほどに、傷や凹みさえも味わいとなり、アンティーク家具特有の魅力を醸し出します。この経年変化によって、木材は深みを増し、アンティーク家具としての価値を際立たせます。時間の経過が木材に唯一無二の風格を与え、所有者と共に歴史を刻みます。

マホガニー
Mahogany
マホガニーは中南米原産の広葉樹で、赤褐色の美しい木目が特徴です。加工性と耐久性に優れ、アンティーク家具に重宝されます。経年変化で風合いが増し、希少価値も高いため、高い評価を得ています。
18世紀イギリスで人気を博し「マホガニーの時代」を築いたマホガニーは、チッペンデールが愛用し、植民地時代の富の象徴として高級家具に用いられた赤褐色の木材であり、大航海時代を通じてヨーロッパに渡り、貴族や富裕層の間でステータスシンボルとなりました。



1.美しい色合いと木目
伐採直後は淡い赤褐色をしていますが、時間の経過とともに深みを増し、独特の光沢を放つ赤褐色へと変化するマホガニー。この美しい色合いは、見る角度によって表情を変えるリボン杢と呼ばれる縞模様と相まって、高級感を演出します。リボン杢は、光の反射によって現れる模様であり、マホガニー特有のものです。
2. 優れた加工性と耐久性
繊維構造の特性から加工性に優れ、複雑な彫刻や装飾を施しやすいのが特徴です。均一な木質により、職人は細部までこだわり、精緻な意匠を追求できます。また、耐久性にも優れており、湿度や温度の変化に強く、長年使用しても変形や劣化が少ないため、世代を超えて受け継がれる高級家具や楽器、家具の素材として最適です。
3.経年変化による美しさ
使い込むほどに色合いが深まり、木目が際立つことで、唯一無二の風合いを纏うマホガニーは、表面の凹凸や傷も歴史を刻み込んだ味わいとなり、アンティーク家具としての価値を高めます。また、光の当たり方によって猫の目のように輝く「キャッツアイ効果」が現れることもあり、見る人を魅了します。
4. 希少なる銘木の価値
その材質と木目の美しさから古くから珍重されてきましたが、乱伐採により森林資源が激減しました。最高級のホンジュラスマホガニーはワシントン条約で取引が厳しく規制され、キューバマホガニーはほぼ市場に出回らず、「幻の木材」と呼ばれるほど希少性が高まっています。

ウォールナット
Walnut
北米やヨーロッパ、アジア原産のクルミ科広葉樹で、日本ではクルミとして知られています。深みのある濃い茶色と、美しい木目が特徴です。加工がしやすく、繊細な装飾を施しやすいため、高級家具に重用されてきました。
17世紀ヨーロッパで人気となり、「ウォールナットの時代」を築いたウォールナットは、フランス王侯貴族に愛され、ヴェルサイユ宮殿にも用いられた暗褐色で滑らかな木材であり、美しい木目から象嵌細工などの装飾にも多用され、現在でも高級家具の材料として人気があります。



1.深みある黒褐色の美
空間に高級感と落ち着きをもたらす、深みある黒褐色が特徴のウォールナット。他の木材にはない独特の色合いは、ウォールナットならではの魅力です。丁寧に磨き上げられたアンティーク家具は、その美しさを際立たせ、見る人を魅了します。その美しい色合いから「木の宝石」とも呼ばれ、古くから高級家具の材料として珍重されてきました。
2. きめ細やかな木肌
ウォールナット材はきめ細かな木肌を持ち、滑らかな手触りが特徴です。丁寧に磨き上げることで、美しい光沢が現れ、上質な質感を際立たせます。アンティーク家具では、職人の手によって丁寧に磨き上げられたものが多く、その滑らかな手触りは、所有者に至福のひとときをもたらします。触れるたびに心地よさを感じさせてくれる素材です。
3.衝撃に強く耐久性が高い
硬く緻密な材質は衝撃に強く、傷や変形を防ぎます。古くから高級家具や楽器、銃床にも用いられ、その堅牢さは広く知られています。日常生活における小さな傷はもちろん、時には大きな衝撃にも耐えうる強靭さを持ち、長年使用してもその美しさを保ち続けます。時を経るごとに増す風合いは、世代を超えて受け継がれる価値を生み出します。
4. 経年変化の美しさ
ウォールナット材は、経年変化により色合いが明るくなることがあります。使い込むことで、深みのある色合いから、明るく優しい色合いへと変化し、独自の風合いを楽しめます。所有者とともに時間を重ねてきた証であり、アンティーク家具ならではの魅力を感じさせてくれます。経年変化によって、より味わい深いアンティーク家具となります。
オーク、ウォールナット、マホガニー。これら3つの木材は、アンティーク家具の世界で特別な存在感を放ち、それぞれが独自の物語を紡ぎます。耐久性や美しい木目といった共通点を持ちながらも、オークの力強い存在感、ウォールナットの洗練された美しさ、マホガニーの優雅な風格と、それぞれが唯一無二の個性を宿しています。
ANTIMOでは、これらの銘木を使用したアンティーク家具を多数取り揃えております。実際にお手に取ってご覧いただけないのが残念ですが、各商品の詳細ページには、様々な角度から撮影した高解像度の画像を掲載しております。木材の色合いや木目の表情、職人の手仕事による繊細な装飾など、細部に至るまでご確認いただけます。
アンティーク家具を選ぶ際は、まず、お部屋の雰囲気やインテリアのスタイルを思い描いてみましょう。重厚感のある空間にはオークやウォールナットが、優雅で華やかな空間にはマホガニーがおすすめです。また、各商品の説明文には、木材の特徴や家具の状態などを詳しく記載しておりますので、ぜひ参考にしてください。
ANTIMOを通して、これらの木材が紡ぎ出す豊かな物語と、アンティーク家具ならではの魅力を感じていただければ幸いです。

素材を知る、木の物語。
Understanding Wood: The Story of Antique Materials